研究概要 |
歯の形態形成は上皮-間葉相互作用により行われる。しかし近年上皮から受けた情報をresetされた間葉組織(1)や、enamel knotを除去した歯胚(2)も歯の形成能力を持つことが報告され、これまでの上皮-間葉相互作用の概念やenamel knotの意義について再検討する必要が生じている。 マウスには切歯と臼歯の間に歯の存在しないdiastema領域が存在する。しかしこの領域にも一過性に歯胚(痕跡的歯胚)が存在するとの報告がある。そこでこの痕跡的歯胚についてMsx1とMsx2の発現を観察しさらに、痕跡的歯胚の上皮と間葉を分離して、正常な臼歯歯胚の上皮と間葉とそれぞれrecombinationを行なった。その結果、Msx1とMsx2の発現は正常歯胚と同様であった。また、痕跡的歯胚の上皮と正常歯胚の間葉とrecombinationでは歯が形成されるが、痕跡的歯胚の間葉と正常歯胚の上皮とのrecombinationでは歯は形成されなかった。これらの結果から、痕跡的歯胚の成長の阻害には他の遺伝子が関わっていること、痕跡的歯胚も間葉組織の状態により正常な歯に成長出来る可能性が示唆された。また歯根形成における上皮-間葉相互作用のはたらきを明らかにするため、歯根形成時のin vivoでのシグナル遺伝子の発現を調べた。その結果、歯根形成の際には歯冠形成とは異なるシグナル遺伝子の発現パターンが観察され、歯根形成には特殊なシグナリング遺伝子のカスケードが存在することが示唆された。 参考文献 (1) H Yamamoto et al., Journal of Electron Microscopy 62 (6) : 559-566, 2003. (2) S-W Cho et al., 1^<st> SFBD/BSDB Meeting (Nice, France) Abstract p20, 2003.
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