研究概要 |
歯の間葉組織は上皮組織から受けたシグナルにより歯の形成能を獲得したと考えられる。しかし上皮組織からのシグナルを失った状態の間葉組織も歯を形成する能力を持っていることが明らかにされた(Yamamoto et al., J Electron Microsc,52:559-566,2003)。しかし歯根および歯周組織が形成されるか否かについては不明である。そこでE13.5のマウス下顎第一臼歯にYamamotoら(2003)のrecombination法を応用して歯性間葉組織が歯根および歯周組織を形成する能力を有するかについて検索した。Reaggregation歯胚をマウス腎臓被膜下移植し、6週後に移植歯胚を摘出して実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、reaggregation歯胚は歯根と歯周組織を形成していた。歯根はセメント質を含んでおり、歯の周囲には歯根膜と歯槽骨が形成されていた。セメント質には歯根膜線維様の線維が埋入しており、シャーピー線維様の構造が認められた。またin vivoと同様に根尖部近くに厚い細胞セメント質が観察された。しかし形成された歯根は太い単根であり、in vivoと異なっていた。更にreaggregation歯を取り囲む骨には造血機能を営んでいると考えられる骨髄が存在した。現在「歯」の再生にかかわる研究が多く行われているが、「再生歯」が「歯」として機能するためには「歯」を取り巻く歯周組織が重要である。そのためには単に「歯」を再生させるのみならず、歯と歯周組織あるいは歯と顎骨を一括して再生させることが必要である。本実験で歯根および歯根膜や歯槽骨さらには顎骨様の構造が観察されたことから、reaggregation systemは顎骨を含めた歯の再生研究に有用であると思われた。なお本データは現在投稿中である。
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