研究概要 |
口腔粘膜扁平苔癬のマウスモデルとして,腹部にOxazolneを感作し,つぎに微量のOxazoloneを頬粘膜に塗布しTh1優位なDTH病変を誘導し,発症のメカニズムを検討してきた。病変成立の初期にNK細胞および好中球の浸潤が,T細胞浸潤に先駆けて起こり,病変を誘導していることを明らかにした。病変ではサイトカイン特にIL-2の産生が上昇すること,またINFγは病変部で恒常的に上昇していることをみいだした。 ヒト病巣では,上皮をターゲットとしたCD8陽性のkiller T cellの浸潤がみられ,上皮の破壊,糜爛形成の主因と考えられる。近年,このメカニズムに樹枝状細胞の役割が注目されている。そこで,ヒト病変で樹枝状細胞を観察し,上皮内に樹枝状細胞が多数出現することを示した。これまでに,in vitroの実験から,PGE2が樹枝状細胞の終末分化に重要であることが分っている。我々はPFE2産生の律速酵素であるPLA2とCOX2のヒト病巣に置ける発現を,in situ hybridizationと免疫染色により検討した。その結果,病巣で両酵素発現が上昇していて,樹枝状細胞の分布と相関することを明らかにした。次に,マウスモデルを用いて,assialo GM1抗体を投与して,樹枝状細胞の前駆細胞である単球の一部を抑制したところ,局所に樹枝状細胞の浸潤はみられなくなり,病変も形成されなかった。続いて,樹枝状細胞の動きをみるために,顎下リンパ節での細胞動態についてFACSを用いて検索し,follicular dendritic cellマーカーに陽性の細胞の比率が上昇した。これは,病変部で刺激を受けた樹枝状細胞がT細胞分化を誘導できず,Th1細胞の病変部へのリクルートが阻害され,病変が成立しないものと感がえられた。これらの結果は,第12回国際口腔病理学会議(マドリット)を始め国内外の学会で発表した。
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