研究概要 |
病原性真菌に対する抗真菌剤作用時おける活性酸素の関与を調べてきた.活性酸素の関与がもっとも顕著に観察されたのはアムフォテリシンB(AmB)であった.AmBの成果を基にアゾール系抗真菌剤でさらに検討をした. 活性酸素産生剤であるparaquat(PQ)とPQによる活性酸素の産生促進がみられる親株と,PQに無反応な呼吸欠損変異株を用いて実験を進めた.寒天培地でのディスク法で5種のアゾールの抗菌活性がPQで促進されるかどうかをみた.アゾールの中では,ketokonazole(Kcz),itraconazole(lcz),miconazole(Mcz)でPQによる抗菌活性促進がわずかにみられた.しかし,AmBの場合のようなはっきりした促進ではなかった.液体培養法では,どの抗真菌剤の場合もPQの効果は不明瞭であった.化学発光試薬MCLAを用いての化学発光法および蛍光試薬H_2DCF-DAを用いてのプレートリーダ法で活性酸素産生に対するアゾール類の効果を見たが,特別の効果は示さなかった.したがって,アゾール系抗真菌剤における活性酸素の関与については,さらに実験条件を検討する必要がある. 次にアゾール類の阻害部位が細胞膜成分エルゴステロールであることに着目し,farnesol(FOH)について調べた.FOHはエルゴステロールの前駆体であるラノステロールから作られることから,アゾール添加により蓄積することが考えられる.そこで,蛍光試薬H_2DCF-DAを用いて活性酸素産生に対する効果を詞べたところ,FOHは親株だけではなく呼吸欠損株の活性酸素産生をも促進した. この結果は,FOHはPQと異なり呼吸系以外の部位に作用して活性酸素を促進していることを示している.今後PQとFOHの二つの活性酸素促進剤を使用して,アゾール系抗真菌剤における活性酸素の関与を調べたい.
|