研究概要 |
本研究は,抗真菌剤作用における活性酸素の関与を明らかにすることを目的とした.研究には正常な呼吸活性をもつCandida albicansの親株(K)とこの親株から誘導した呼吸欠損変異株(KRD-19)を用いた.活性酸素産生剤として知られるパラコート(PQ)は,親株の呼吸鎖に働いて活性酸素(スーパーオキシド)の産生を促進することが,MCLAをプローブとした化学発光法およびH_2DCF-DAをプローブとした蛍光プレートリーダ法で確かめられた.しかし,呼吸欠損変異株ではまったく促進効果を示さなかった.'そこで,寒天培地ディスク法および液体培地法で,各種抗真菌剤の増殖抑制効果に対してPQがどのような効果を示すか調べた.その結果,amphotericin B (AmB)の活性は親株で著名に増強された.しかし,呼吸欠損株ではこのような増強効果は認められなかった.放射性アミノ酸を使っての漏出実験から,PQはAmBがもつ細胞膜破壊活性そのものを増強しているのではないことがわかった. 一方,4種のアゾール系抗真菌剤で,A血Bと同様の実験をおこなった.しかし,寒天培地法でketokonazole, miconazole, itraconazoleで弱い促進が見られたが,液体培地法でははっきりした促進は見られなかった.化学発光法および蛍光発光法でも,アゾール系抗真菌剤に対するPQの効果は確認できなかった.しかし,アゾールによるエルゴステロール合成阻害で産生される可能性のあるfarnesol(FOH)は,親株のみならず呼吸欠損株に対しても活性酸素産生を促進した.したがって,FO麗は呼吸系以外の部位に作用して活性酸素を産生していることが推定され,PQと使い分けることにより,今後アゾール類における活性酸素関与解明の手段となることが期待される.
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