破骨細胞は骨吸収をその機能とする多核細胞で、in vitro下ではガラス面上で培養された破骨細胞には膜面の分化形態としてフォーカルアドヒジョンの一変形である動的ポドゾームやアクチンリングが出現するが刷子縁形成はされない。しかし骨や人工アパタイト上で培養したときにはin vivoと同様にポドゾーム、アクチンリングが形成されるとともにガラスなどの人工基質では形成されない吸収窩と刷子縁が出現しより生体に近い破骨細胞の動態が解析できる。そこで超音波により細胞剥離しアパタイト面上で培養した破骨細胞の接着および吸収窩上の刷子縁膜面を露出させ急速凍結、回転蒸着レプリカを作製し超微細構造解析を行なった。 その結果、刷子縁膜ではクラスリン被覆小胞小窩による細胞外からの取り込み、また平滑な膜面をもつ小胞と膜面の融合像が観察され、刷子縁膜面領域が物質の吸収、分泌の場であることを示している。また接着膜面ではガラス面上で培養した場合と基本的には同じアクチンリングやポドゾーム構造が出現し、アクチン細胞骨格を主体とした構造をステレオペア、トモグラフィー三次元構造解析できた。そのような構造ではアクチン細胞骨格が接着膜面に膜面粒子を介して結合し、アクチンリングやポドゾーム構造は従来考えられていた単なるアクチン線維が束ねられたものではなくその構造の中で複雑に分岐し、重合、脱重合してアクチン線維の構築、再構築が動的に行なわれている構造であることが一連の研究で明らかとなった。さらに他の細胞骨格との関連を追及するため、細胞剥離とは別の界面活性処理すると膜は溶失するが細胞骨格は細胞剥離法より残存させることが判明した。これら手法は現在求めうる最良の時間、空間分解能での膜と細胞構造をナノメーターレベルで可視化できる手法であり、これらの手法は破骨細胞の接着装置の動的構造を解析するにあたって有効な形態的手段であった。
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