研究概要 |
1.再植歯の修復過程に及ぼすビスフォスフォネートの一種、アレンドロネート(ALN)の短期的な効果 6週齢のラット105匹を3群に分けた。1群の動物は麻酔下で抜去した上顎第一臼歯を1mMALN含有0.9%NaClに5分間浸漬後、再植した(ALN群)。他の1群では抜去歯を0.9%NaClに5分間浸漬後、再植した(SAL群)。残りの1群では再植を行わなかった(CNT群)。7,14及び21日目に再植歯歯根膜機械的強度の測定、マイクロCT撮影及び組織学的観察を行った。7,14及び21日目に、ALN群はCNT群の平均の43,60及び67%の歯根膜強度を示した。一方SAL群は7及び14日に45及び65%の歯根膜強度を示したが、21日では骨性癒着のため歯根膜強度を評価できなかった。SAL群において21日目に観察された骨性癒着や歯髄中の硬組織形成は、ALN群において顕著に抑制されていた。以上から、ALNの局所適用は骨性癒着を抑制することにより、再植後の機能的な歯根膜の修復に3週まで有効であることが示された。 2.ALNの長期的な効果 6週齢のラット29匹を用い歯を再植後60及び120日目にマイクロCTと組織学的観察を行い、4つの歯根について3つの歯根レベルで解析した。歯根吸収及び骨吸収の発生率はALN群(3及び16〜22%)でCNT群(27〜32及び25〜34%)より有意に少なかった。また、ALN群では吸収の程度も小さかった。歯根の骨性癒着は両群(28〜46%)で発生率に違いは認められなかったが、ALN群では癒着の程度は軽度であった。歯髄の硬組織形成は両群(53〜89%)で高頻度に出現した。以上から、ALNの局所適用は再植2〜4ヶ月後でも歯根と骨の吸収や歯根の骨性癒着に、3週の場合より抑制の程度が減少したものの、依然として抑制効果を示し、有効であることが判明した。
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