研究概要 |
マウス骨髄細胞培養系において、破骨細胞形成におけるイソプレナリン(ISO)とニューロペプチドY(NPY)との相互作用を検討し、交感神経系による骨吸収調節機構を解明した。骨髄細胞にはβ2-アドレナリン受容体(β2-AR)およびNPY受容体(NPY-Y1R)のmRNA発現を認めた。この骨髄細胞をISO(1μM)存在下で7日間培養すると吸収活性を持つ破骨細胞が出現するが、ISOと同時にNPY(1,10,100nM)を併用処理すると、破骨細胞形成および吸収活性は濃度依存的に低下した。NPYは、PTHによる破骨細胞形成も抑制したが、VDまたはs-RANKLによる破骨細胞形成には影響を及ぼさなかった。また、NPYはISOによるRANKLおよびcAMP産生を抑制したが、VDによるRANKL産生には影響を及ぼさなかった。アデニル酸シクラーゼを活性化しcAMP産生を促進するフォルスコリン(FK)および外因性にcAMPを供給するジブチリルcAMP(db-cAMP)は、いずれも破骨細胞形成を誘導した。これに対し、NPYはFKによる破骨細胞形成を抑制したが、db-cAMPによる破骨細胞形成には影響を及ぼさなかった。以上の結果は、マウス骨髄細胞培養系において、NPYはISOが誘導するcAMPおよびRANKL産生を抑えることで破骨細胞形成を抑制することを示した。一方、骨芽細胞株MC3T3-E1細胞は恒常的にβ2-ARのmRNAを発現しているがNPY-Y1Rの発現は極めて弱い。しかし、MC3T3-E1細胞はISO処理によりNPY-Y1RのmRNA発現を増大した。このことは、ISOはβ2-ARを介して破骨細胞形成を促進する一方で、NPY-Y1R受容体を誘導し自身の働きを抑制している可能性を示した。
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