研究課題
基盤研究(C)
感染による骨硬化病変の発症機構を明らかにする目的で本研究を行った。マウス骨芽細胞様MC3T3-E1(E1)細胞にはToll様受容体(TLR)1、3、4、5、6および7、マウスストローマ細胞であるST2細胞にはTLR-1〜7、ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様MG-63細胞にはTLR-3、6および7の発現が認められた。これらの3種の細胞に共通して発現し、最も発現量の多いのはTLR-3であった。そこでこれらの細胞をコンフルエントまで培養し、TLR-3のリガンドであるpoly I:Cを作用させると約2週間で石灰化結節の形成が認められ、MC3T3-E1においては対照群と比較してより早期に石灰化結節が出現し、その数の増加傾向も認められた。また、アルカリホスファターゼ遺伝子プロモーター領域あるいは転写因子Cbfa1結合配列をタンデムに結合したオリゴヌクレオチドをルシフェラーゼ遺伝子に結合してMG-63細胞に遺伝子導入し、poly I:Cを作用させるといずれの転写活性も増加傾向を示した。さらに、poly I:C処理E1細胞のmRNAをDNAマイクロアレイを用いて分析の結果、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)の発現増加が認められた。また、FGF-2の転写制御に関与する転写因子Egr-1のタンパク質発現も経時的に増加した。以上の結果からウイルスが何らかの原因で骨組織に進入すると骨芽細胞や間質細胞の自然免疫系が機能して石灰化が亢進し、この機構にFGF-2産生増加によるCbfa1の活性化が関与する可能性があることが示唆された。今後はFGF-2の転写活性増加に関与する細胞内シグナル伝達経路に関して詳細に検討する予定である。
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