研究概要 |
歯原性上皮の腫瘍化におけるアポトーシスとそのシグナル伝達機構の異常を解明するため、主要なアポトーシス経路であるデスレセプターを介する経路とミトコンドリアを介する経路のシグナル伝達分子について、歯原性上皮に由来する代表的な腫瘍であるエナメル上皮腫及び悪性エナメル上皮性腫瘍における、発現を検索した。 1.デスレセプターを介するアポトーシスのシグナル伝達分子の検討 歯胚、エナメル上皮腫、悪性エナメル上皮性腫瘍において、代表的なデスレセプターであるTNFR1,TRAIL-R1,2およびその下流のアポトーシス実行因子であるカスペース8について、RT-PCRおよび免疫組織化学で検索した。歯原性組織において、TNFR1,TRAIL-R1,2は発現が認められ、上皮成分に広く分布していた。しかし、カスペース8の発現はごく少数のエナメル上皮腫にのみ認められ、その分布は限られていた。 2.ミトコンドリアを介するアポトーシスのシグナル伝達分子の検討 歯胚、エナメル上皮腫、悪性エナメル上皮性腫瘍において、ミトコンドリア経由のアポトーシスシグナル伝達分子であるシトクロームc, APAF-1,カスペース9について、RT-PCRおよび免疫組織化学で検索した。歯原性組織において、シトクロームc, APAF-1,カスペース9は発現が認められた。シトクロームcの分布は基底膜近傍の上皮成分で著明で、歯胚に比べエナメル上皮性腫瘍で若干強かった。APAF-1,カスペース9の分布は上皮成分にびまん性にみられた。 3.総括 歯原性組織におけるアポトーシスは、主にミトコンドリアを介する経路によると考えられた。また、アポトーシスシグナル伝達分子の変化は、歯原性上皮の腫瘍化に関わることが示唆された。
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