本研究では(1)LPSの混在を最小にして精製したフィンブリエを用いて、好中球の活性化誘導能について調べた。 1)付着非依存性の活性化:LPSと同様のプライミングを起こす作用があるかどうかを検討したところ、フィンブリエにはプライミングを起こす活性は認められなかった。2)付着依存性の活性化:プライムされた好中球は血漿、フィブリノーゲンなどに付着して強い活性酸素産生を示す。フィンブリエでコートした試験管内で好中球の活性酸素産生が起るかどうかを検討したところ、好中球は活性酸素産生応答を示した。しかし血漿やフィブリノーゲンよりも弱かった。 (2)フィンブリエは単球/マクロファージにサイトカイン産生を誘導することが報告されている。それらの報告ではフィンブリエを混在するLPSを除去することなく用いているので、LPSを極限まで除いた標品を用いて好中球のIL-8産生について検討したところ、フィンブリエにはIL-8産生誘導能があることが分かった。しかしその活性はLPSよりも弱いものであった。 (3)好中球のフィンブリエに対する応答にTLRが関与しているかどうかについて抗TLR抗体を用いた阻害実験によって検討した。IL-8産生を指標にして、モノクローナルおよびポリクローナルの抗TLR2および抗TLR4を用いた阻害実験により検討ところ、抗TLR4抗体によって抑制される事が分かった。 (4)好中球におけるフィンブリエの刺激伝達系についてp38MAPKを中心に検索した。フィンブリエによってMKK3/p38 MAPK経路が実際にフィンブリエによって作動しているかをウエスタンブロッティングによって検討したところ明瞭な活性化を認めるに至らなかった。 以上の結果はP.gingivalis由来フィンブリエの好中球刺激活性は弱いということを示すものであり、歯周炎における好中球を介した病原因子としての関与は弱いと結論した。
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