研究課題
基盤研究(C)
ミトコンドリアの障害は種々の疾病(アルツハイマー、パーキンソン病)や老化を引き起こすことが言われている。これらの疾病のメカニズムには細胞内ミトコンドリア発生活性酸素(mitROS)の関連性が言われ、酸化ストレス病であることが報告されている。一方、リウマチ性関節炎は、疼痛や開口制限の再燃と寛解をくり返し慢性炎症であることが報告され、酸化ストレス病の可能性を示す。本研究では、リウマチ性関節炎の発症においてサイトカイン等で誘導されるmitROSが疾患の病態に影響を及ぼしているのではないかと仮説を立て、その検証を行うことを目的とし、さらに、エストロゲンレセプター(ER)の量の変化とmitROSの関連性についても検討した。材料と方法:リウマチ性関節炎患者の膝関節から摘出した新鮮滑膜線維芽細胞を用いた。これらの細胞にエストロゲン(E2)を投与し、サイトカイン刺激下で培養した。細胞内のROSはHPF蛍光試薬、NOはDAF蛍光試薬により共焦点レーザー顕微鏡で観察を行った。過酸化脂質はHNE抗体処理法、アポトーシスはHoechst法により検出した。さらに、細胞にsiRNAをトランスフェクトし、ERα発現を抑制した細胞において上記と同様の検討を行った。結果:(1)ERα発現の多い滑膜線維芽細胞では、E2投与によりサイトカイン刺激に由来する細胞内のmitROS、NOおよび過酸化脂質の産生は有意に抑制され、アポトーシスの割合も減少した(E2効果)。(2)ERαの遺伝子発現を抑制するsiRNAを滑膜線維芽細胞にトランスフェクトすると、mitROS、NO産生およびアポトーシス発現に対するE2効果は認められなかった。以上より、E2はER発現量が十分発現されている細胞でE2効果を表わし、リウマチ性関節炎の病変に重要な役割を果たすことが示唆された。
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Oxidative Stress, Disease and Cancer(Imperial College Press, London, UK)
ページ: 61-83