研究分担者 |
小木曽 文内 日本大学, 歯学部, 助教授 (70147643)
本橋 正史 日本大学, 歯学部, 講師 (90102615)
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 講師 (10226532)
関 みつ子 日本大学, 歯学部, 助手 (20226640)
加藤 英美 日本大学, 歯学部, 助手 (90297838)
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研究概要 |
目的:歯根嚢胞および根尖性歯周炎の拡大機構に及ぼすIL-1αの影響を骨芽細胞による骨形成能の視点から明らかにするために,骨芽細胞のin vitroにおける石灰化nodule形成と,その形成に必要な酵素および細胞外マトリックスタンパク(ECMP)の遺伝子発現に及ぼすIL-1αの影響を調べた。また,軟骨細胞のECMPの遺伝子発現に及ぼすIL-1αの影響も併せて検討した。 方法:骨芽細胞としては,ラット骨肉種由来の株化骨芽細胞(ROS 17/2.8)を,また軟骨細胞としては,ヒト軟骨腫由来の株化軟骨細胞(OUMS-27)を用いた。細胞を刺激する際のIL-1αの濃度は0〜100 U/mlとし,培養期間は10または14日間とした。石灰化nodule形成はアリザリン赤染色によって,ECMPの遺伝子発現は半定量的またはreal-time RT-PCR法によって調べた。 結果:IL-1α添加によって骨芽細胞による石灰化nodule形成の時期が遅れ,また石灰化nodule中のカルシウム量はコントロールと比べて低い値を示した。アルカリホスファターゼ(ALPase)活性値は,14日間の培養期間中すべてにおいてIL-1αによって有意に低下した。この所見は,石灰化物を形成しない軟骨細胞においても同様であった。ECMPの遺伝子発現では,骨芽細胞のtype I collagenの発現は10日間の培養期間中すべてにおいてIL-1αによって有意に低下し,培養初期にのみ発現したbone sialoproteinもIL-1αによって低下する傾向を示した。一方,osteopontinの発現は10日間の培養期間中すべてにおいてIL-1αによって有意に上昇した。軟骨細胞のtype II collagen, aggrecanおよびlink proteinの発現は,IL-1αの濃度依存的に有意に低下し,その作用機序はBMP-2のautocrine作用による受容体の発現低下に伴って起こることが認められた。 結論:IL-1αは骨芽細胞のALPase活性値およびtype I collagenの産生低下を介して骨形成を抑制することが示唆された。また,IL-1αによる骨形成の阻害が,歯根嚢胞の拡大を助長することが示唆された。
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