研究概要 |
我々は,IL-1が骨形成を抑制するとともに骨吸収を誘導し,この現象が歯根嚢胞や根尖性歯周炎の拡大に関与すると考え,すでにIL-1αがROS 17/2.8細胞の石灰化nodule形成を抑制することを報告した。そこで今回,RANK-RANKL signaling systemに着目し,ROS細胞を用いて,まずM-CSFとOPG発現およびPGE_2産生に及ぼすIL-1αの影響を調べた。次いで,破骨細胞前駆細胞としてマウス単球RAW264.7を用いて,IL-1α刺激を受けたROS細胞と単球によるRANK-RANKL signaling systemを介する破骨細胞様細胞(OC)形成に及ぼすIL-1αの間接的な影響を調べた。その結果,ROS細胞のM-CSF発現とPGE_2産生はIL-1α刺激によって有意に上昇したが,OPG発現は低下し,RANKL発現は検出されなかった。単球にsoluble RANKLを含むIL-1α刺激後のROS細胞の培養上清を加えて培養すると,TRAP染色陽性かつ多核のOCが多数観察された。以上の結果から,骨芽細胞がIL-1αによつて刺激されると,単球のM-CSFとPGE_2の産生促進,およびOPGの産生抑制によって,IL-1αが骨芽細胞を介してOCの形成に積極的に関与していることが示唆された(Life Sci 77(6),2005)。次いで,骨タンパクの分解とその調節機構に着目し,ROS細胞のMMPs,TIMPs,PAsおよびPAI-1の発現に及ぼすIL-1αの影響について調べた。その結果,IL-1αはMMPs,tPAおよびuPAの産生増加とPAI-1の産生低下によって骨タンパク代謝を促進させるとともに,その代謝を分解系に傾けることが示唆された(Life Sci 78(17),2006)。また,この傾向は,IL-1βによって刺激された軟骨細胞においても同様に認められた(Life Sci 77(25),2005)。以上のことから,IL-1αは骨芽細胞を介するOC形成促進と骨芽細胞自身による骨有機質の分解によって骨吸収を誘導し,歯根嚢胞や根尖性歯周炎の拡大に積極的に関与していることが示唆された。
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