研究概要 |
イソプロテレノール(IPR)を投与したマウスの耳下腺にエックス線を照射し,3日後の影響を,組織像の観察,耳下腺腺房細胞内の分泌顆粒の数と面積,光顕オートラジオグラフィ(LMARG)により検討した。 方法:生後8週齢のBalb/c雄性マウスを使用し,A群(IPR非投与-エックス線無照射),B群(IPR投与-無照射),C群(IPR非投与-10Gy照射),D群(IPR投与-10Gy照射),の4群を比較した。イソプロテレノール(IPR)投与180分後(マウスの耳下腺腺房細胞内の分泌顆粒ほとんど存在しない状態),耳下腺相当部に10Gyのエックス線(6MV,2.0Gy/min)を照射した。3日後に耳下腺を摘出し,Epon樹脂で包埋した。約1μm厚の切片をトルイジンブルー染色し組織像を観察した。約0.1μm厚の切片を電子染色し,耳下腺腺房細胞内の分泌顆粒の状態をTEMで観察した。腺房細胞機能の検索はLMARGで行った。つまり照射3日後に各群に^3H-leucineを投与し,15,30,60,120,240分後に耳下腺を摘出し,約1μm厚の切片を作成,LMARG用乳剤(NTB2)を塗布し,露光後,腺房細胞内の還元銀粒子数を計測し検討した。 結果:(1)光顕像ではC群,D群ともに腺房細胞の配列の乱れと核濃縮がみられ,その変化はD群の方がC群よりも軽度であった。(2)分泌顆粒の形状は無照射群で電子密度のほぼ均一な円形を示し,B群のほうがA群よりも電子密度が低かった。また,C群,D群ともに電子密度が不均質であった。(3)C群,D群の分泌顆粒数はそれぞれA群,B群と比較して有意に低値を示した。(4)分泌顆粒1個あたりの面積は4群で差がみられなかった。(5)LMARGによる腺房細胞内の還元銀粒子数は,A群と比較してC群のRI投与30分後で有意に低値をとり,240分後で有意に高値を示した。D群はB群と比較して有意差はみられなかった。
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