平成18年度は、DCワクチンにより腫瘍特異性を獲得したCTLが、より効率的に腫瘍細胞を攻撃する機序の解明を目的とした。具体的には、1)CTLの主役であるCD8陽性細胞傷害性細胞に発現するLFA-1と人為的に腫瘍細胞に発現させたICAM-1による接着経路を利用できるか、および2)腫瘍細胞での発現が増強される細胞表面糖鎖末端へのシアル酸付加を利用して、このシアル酸をターゲットとしてCTLが効力を発揮できるか、の2点を検討した。まず、腫瘍細胞(B16細胞)の培養液にインターフェロンγ(IFN)を添加することにより、ICAM-1が同細胞に発現することをmRNAおよび蛋白レベルで確認した。LFA-1発現のCD8陽性細胞傷害性細胞(CTL)が、ICAM-1を発現させたB16細胞に接着することをStamper-Woodruff binding assay (SWBA)法により証明した。さらに、CTL細胞が腫瘍細胞に対する細胞傷害も確認した。2)のシアル酸付加に関しては、B16細胞の培養期間に相関してシアル酸の発現が増強することが明らかとなった。さらに、シアル酸発現のB16細胞は、リンパ管内皮に強固に接着することをSWBA法により確認した。この結果は、本モデルのリンパ節転移が高率である根拠として、B16細胞のシアル酸とリンパ管内皮細胞との相互作用が関与することが示唆された。以上の1)と2)の結果から、GVT効果の増強には、腫瘍細胞のICAM-1発現が関与することが示唆された。さらに、今後の課題として、シアル酸含有糖タンパクであるsialyl Lewis Xを標的分子として、CTL上でのリガンドを検索する必要性が生じた。すなわち、B16細胞での同糖タンパクとCTL上の同蛋白に対する相互作用により、接着現象をより強固にすることができるものと考えた。
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