QLF(Quantitative Light induced Fluorescence)は、初期のエナメル質う蝕の診断に有効であることが多く報告されている。本研究ではQLFを用いて、歯根う蝕の進行の継時的変化を観察することにより、QLFの歯根う蝕診断への有用性について検討した。事前に書面で承諾を得た10名の患者の軽度の歯根う蝕に対して、口腔衛生指導、PMTC、フッ化物歯面塗布などの対応を行いながら、3か月ごとにQLF(QLF pro、Inspector社製)でう蝕の状態を観察し、red fluorescenceの分析を行い、う蝕病巣の変化について評価を行った。その際、う蝕検知液で染色したう蝕病巣についてもQLFで観察し、う蝕検知液併用の効果についても評価を行った。観察期間中に視診で進行したと診断した歯根う蝕病巣では、QLFによるred fluorescenceを示す領域は増加した。また、一部の症例では、う蝕検知液の併用はシグナルを増幅させ、より明瞭なう蝕病変の観察が可能になった。一方、濃く黒変した歯根う蝕は、red fluorescenceの検出が困難であった。また、多くの歯根う蝕の認められた部位は歯肉に近接しており、歯肉の赤色がQLFによる観察に影響を及ぼすため、これに対応する必要が認められた。以上より、歯根う蝕に対するQLFを用いたred fluorescenceの分析は、多くの症例においてう蝕病変の変化を知るのに有効であった。
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