| 研究概要 |
本研究は象牙質・歯髄複合体の形成と再生機構を明らかにし,再生療法への応用のための基礎的データを得ることを目的として,マウス歯の発生過程,ラット切歯先端部の骨様象牙質形成過程,ならびにレーザー照射後のラット歯髄内硬組織形成過程における細胞分化と硬組織形成機構について検討を行った。
1.歯の発生過程におけるTIMPsの発現と局在
歯の形態形成と細胞分化におけるTIMP(tissue inhibitors of metalloproteinase)-1,-2,-3の役割を解明する目的で,マウス切歯発生過程におけるこれらの発現を検索した。その結果,それぞれ特異的な時間的・空間的発現パターンを示すことが明らかにされ,特に象牙芽細胞にTIMP-1の強い発現が,またTIMP-3の発現が象牙芽細胞下層の細胞に観察され,象牙芽細胞の分化との関連性が示唆された。
2.骨様象牙質形成過程における非コラーゲン性タンパクの局在
萌出前のラット切歯先端部に形成される骨様象牙質の特性を明らかにする目的で,非コラーゲン性タンパクの局在を免疫組織化学的に検索した。その結果,オステオカルシン,骨シアロタンパクならびに象牙質シアロタンパクの局在が観察され,象牙質との類似性を示したが,その構造は象牙質とは異なり,形成機構の相違が示唆された。
3.レーザー照射に対するラット臼歯歯髄の反応
レーザーの象牙質再生療法への応用のための基礎的研究の一環として,GaAlAs半導体レーザー照射に対するラット臼歯歯髄の反応を組織学的,免疫組織化学的に検索した。その結果,歯質の切削なしに歯髄腔内に第三象牙質形成が誘導されること,また出力の増加に伴い歯髄内に骨様組織形成が惹起されることが明らかとなり,レーザーの有用性が示唆された。
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