6週令のウイスター系雄性ラットに、ペントバルビタールナトリウム(ネンブタール25.9mg/kg)の腹腔内麻酔を施したのち、術野を3%イソジンと70%アルコールで消毒した。下顎骨に達する切開を加え、皮膚骨膜弁を開き下顎骨の1部を露出させ、1/2ラウンドバーを用い低速回転で、オトガイ孔下方の下顎骨に約1mmの円形窩洞を形成し、鋭利な探針で露髄させた。滅菌生理食塩液を用い露髄部の洗浄及び止血を十分に行った。キチンモノマー(N-アセチル-D-グルコサミン)及びキトサンモノマー(グルコサミン)で覆髄し、グラスアイオノマーセメントで仮封ののち、骨膜弁を元の位置に戻し皮膚縫合を行った。 術後0、1、3、5日目、ペントバルビタールナトリウムの腹腔内の深麻酔下で0.1Mカコジル酸緩衝(pH7.4)2%パラホルムアルデヒドと2.5%グルタールアルデヒド液で灌流固定を行った。リンゲル液の注水下で、ダイアモンドディスクを使って窩洞部を含む下顎切歯を可及的に小さく切り出し、同固定液に1時間、四酸化オスミウムで1時間の後固定を行った。通法により、アルコール脱水、エポキシレジンに包埋後、厚さ約2μmの切片を作製した。トルイジンブルー染色後、光学顕微鏡にて歯髄創傷治癒過程の観察を行った。 なお、本実験は、事前に内容を長崎大学先導生命研究支援センター動物実験施設へ申請し、委員会で承認を受けたのち実施した。 術後1日目、炎症性細胞の浸潤はキトサンモノマーのほうがより軽度だったが、いずれにおいても、キトサンポリマーで見られたような強度の炎症反応は観察されなかった。3日目、5日目になると窩洞内は線維芽細胞の浸潤が進んでいくがキチンモノマー貼付群では露髄部表面に壊死層が出現し5日目になってもまだ表層の一部に残存していた。 今回の結果からキトサンモノマーは生体組織親和性素材として優れた性質を持つ材料であることが確認できた。
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