目的)難治性根尖性歯周炎の病態を解明する目的で、根管滲出液および歯根肉芽腫における誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)と血管内皮カドヘリン(VE-cadherin)の関連を病理組織学的、分子生物学的に検討したところ、以下の結果を得た。 結果) 1.根管滲出液の検索:根管滲出液から細胞成分を分離し、サイトスピンを用いて標本を作製したのちH-E染色したところ、PMNsが優位な細胞であった。そのPMNsは免疫染色でiNos陽性を示し、RT-PCR法でiNOSの遺伝子発現を示した。 2.歯根肉芽腫の検索:歯根嚢胞と臨床診断された組織をH-E染色し、歯根肉芽腫と病理診断されたものを試料とした。抗ヒトiNOSまたは抗ヒトVE-cadherinモノクローナル抗体を用いて免疫染色したところ、肉芽組織中のマクロファージ、リンパ球、線維芽細胞、PMNsのiNOS陽性と血管内皮細胞のiNOSおよびVE-cadherin共陽性を確認した。また、このiNOS陽性細胞は血管内皮細胞の周囲に多く浸潤していた。このiNOSとVE-cadherinの遺伝子発現をreal time PCR法で検索したところ、全ての歯根肉芽腫サンプルからその遺伝子発現を確認したが、発現強度はVE-cadherinよりもiNOSの方が強い傾向を示した。 3.ヒト膀帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)の検索:IL-1βとEsheruchia coli由来LPSで2〜24時間刺激した。培養細胞からのiNOSおよびVE-cadherin遺伝子発現をreal timepCR法で検討したところ、両者の遺伝子発現が確認された。なお、それらの発現強度は歯根肉芽腫のときとは異なり、iNOSよりもVE-cadherinの方が強い傾向を示した。 4.Nos合成阻害薬の検討:3.の細胞培養系にNo合成阻害剤を添加し、iNos遺伝子の発現を検索したところ、添加していないものと比較してその発現が低下した。 結論)NOの関与によりVE-cadherinの産生が調節されている可能性が示唆された。
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