研究概要 |
エナメル色,デンティン色,オペーク色などを有する光重合型レジンは,天然歯に近い歯冠色を表現するのに適した修復材として市販されている。しかし,臨床の場でそれらを適切に組み合わせ希望する色調を表現するには十分な臨床的示唆が少なく,長時間を要する操作となっている。 Two layer法での光重合型レジンの色彩学的特性を把握するために,A2シェードのエナメル色およびデンティン色を有する光重合型レジンEsteliteΣ(ES,トクヤマ),Solare(SO, GC), Filtek Supreme(FS, 3M ESPE), Gradia Direct(GD, GC)の4製品を用い,背景色(黒色基準板,白色基準板測定,A2およびA4 VITAPAN classical shade)に対する影響を測定した。測色はフレキシブルセンサーをもつ高速分光光度計Spectro Phot Meter CMS-35FS/C(村上色彩技術研究所)および刺激値直読式測色計Shade Eye NCC(松風)で行った。色の表示にはCIE 1976L*a*b*を用い,L*,a*,b*およびシェードを測定した。得られた測定値についてはDuncan's multiple range testによって有意水準5%で統計的分析を行った。 背景色に対するsingle layerの影響を検討した結果,光重合型レジンが黒,白背景色の影響を受けないで固有の色調を表現するには2.0〜4.0mm,およびA2,A4背景色の影響を受けないで固有の色調を表現するには0.7〜2.0mmのレジン層が必要であることが判明した。次いで,single layerで得られた結果から0.1〜1.5mmまでの厚さ試片作成し,A2板の上にデンティン,エナメルの順に積層した条件での色彩的検討を行った。その結果,いずれの製品でも色度図の中心からわずかに赤味方向に位置した特定領域の明度を有する色調を示した。また,Two layer法での色調適合性は,オペーク性能を有するデンティンレジンの厚さとその色調に支配されることから光重合型レジンの特徴を把握した材料の選択が重要となることが臨床的に示唆された。
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