本研究「歯髄組織再生のための細胞と担体の複合体の開発」では、実験材料として、患者から歯の提供を受け、そこからヒト歯髄(HDP)細胞の分離培養を行うため、まず本年度の愛知学院大学歯学部倫理委員会において、本研究遂行に関する倫理審査申請を行い、6月10日付けで承認を得た。 実際に患者から試料の提供を受ける際には、口腔用デジタルカメラで撮影した画像をコンピューター・ディスプレー上に明示して的確な説明を行い、インフォームドコンセントを得たうえで、試料の提供を受けている。 HDP細胞の分離と培養は、矯正歯科治療などのため、抜去が必要とされた臨床的に健全な新鮮抜去歯の歯髄組織を培養して得られた細胞を使用している。新鮮抜去歯を直ちに抗生剤を含む滅菌生理食塩水に浸漬して洗浄後、クリーンベンチ内で歯を割断して歯髄組織を取り出し、抗生剤を含むダルベッコMEM培地でよく洗浄した後、歯髄を約1.5×1.5mmの小組織片に細切し、セルカルチャーディッシュ中に静置して、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を加え、37℃、5% CO_2下で培養している。そして、組織片より遊出した細胞がコンフルエントな状態になった後、継代培養を行い、4〜8継代したものについてアルカリフォスファターゼ(ALPase)活性を測定し、皮膚由来線維芽細胞に比べて、そのALPase活性値が有意に高いことを確認した。 現在、吸収性担体である(1)キチン、キトサン、(2)ポリ乳酸、ポリグリコール酸、(3)コラーゲンの3種類を使用して、細胞・担体複合体の調製について検討中である。
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