「歯髄組織再生のための細胞と担体の複合体の開発」において、初年度はヒト歯髄(HDP)細胞、次年度はコラーゲン・スポンジ、最終年度は、それらを用いた「細胞・担体複合体」の調製、および生体適合性について検索し、次のような知見を得た。 1.分離培養したヒト歯髄細胞の性状 ヒト歯髄細胞(HDP細胞)は、星状あるいは紡錘形で線維芽細胞と類似した形態であり、皮膚由来線維芽細胞に比べて、アルカリフォスファターゼ(ALPase)活性値が有意に高かった。 2.調製したコラーゲン・スポンジ(担体)の性状 コラーゲン・スポンジは、辺縁部では約100Fm程度の不整形な少孔を有し、中心部ではその少孔のサイズは非常に小さく、密な網目構造であった。その成分は、コラーゲンタイプ1が約80%、タイプIIが約20%であった。 3.ヒト歯髄細胞・コラーゲン(担体)複合体について コラーゲン・スポンジ内部へのHDP細胞の侵入・定着は認められなかった。従って、コラーゲン・ゲルを併用して間質部分を充填するなどの改良が必要であることが示唆された。 4.ラット皮下埋入試験(生体適合性試験)について コラーゲン・スポンジは辺縁部から著明に吸収されて、面積が減少していた。また、その周囲は線維性結合組織で被包されており、炎症性細胞の浸潤は認められなかった。従って、コラーゲン・スポンジ単体の生体適合性は非常に良好であることが示唆された。
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