研究課題
基盤研究(C)
象牙質再生に適した形状の多孔質セラミックスを担体として自己の未分化幹細胞から歯髄・象牙質複合体を再生し、歯根再生を実現することを目的とする従来の一連の研究結果から、気孔率を55%、そして、気孔径を150〜300μmの円筒状の多孔質セラミックス担体をメーカーに作製依頼し、試験に供した。円柱状と円筒状の多孔質セラミックス担体によるin vivoの実験で、担体の形状は気孔内での骨形成量に影響を及ぼすことが確認された。すなわち、ラット大腿骨から採取した骨髄幹細胞を円柱状および円筒状の多孔質セラミックス担体に播種して同系ラットの背部皮下に埋入した結果、担体の気孔に形成された骨量は円柱状担体より円筒状担体の方が多い結果が得られた。円筒状担体の中空部には結合組織が増殖し、気孔内にも小血管を含む結合組織の侵入が認められた。一方、円柱状の担体においては中心部に存在する気孔には結合組織の増殖が認められなかった。円筒状の多孔質セラミックス担体は、円柱状の担体と比較すると中空部内面があるために周囲組織との接触面積が大きい。円筒状担体にはこの内表面が存在するので、担体を包む周囲組織が外表面と中空部内表面に侵入して栄養および骨形成に必要な生理活性物質を気孔内に有効に伝達すると考えられる。本件申請者らが目的とする、歯髄・象牙質複合体の再生、さらには、歯根の再生にとって、象牙質形成能を有する多数の間葉系細胞の採取は困難であり、培養系での象牙質形成には長期間を必要とする。本件申請者らは、自己の未分化細胞から歯髄・象牙質複合体を再生し、歯根再生を実現することを目的として実験を積み重ねてきた。この目的を達成するひとつの段階として、円筒形の多孔質セラミックス担体を用いることによって、より少数の間葉系細胞から硬組織を形成する可能性を見出すことができた。これは象牙質再生に向けての今後の研究において極めて有意義な結果と考える。
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