研究概要 |
本年度は、臨床にて応用可能な歯髄保護法の開発へ次年度に向けてつなげることを目標に、歯髄細胞をラットより採取、培養、増殖の実験系確立と歯髄細胞の特性の確認、考察を行った。 雄ラット(4週齢)を屠殺、下顎骨ごと切除し、軟組織を除去後、生理食塩水、アルコールで洗浄しながら、骨を除去、切歯を摘出し、根尖の歯胚を取り除き、明示された根尖孔からクレンザーを用いて歯髄組織を引き出し、直ちにカナマイシン添加10%FCS含有α-minimum essential mediumに浸し、37℃にて培養、細胞を伸展させた。線維様の細胞の増殖が観察され、それらを数回の継代の後、アルカリフォスファターゼ活性、カルシウム含有量、オステオカルシン量などの生化学的分析データにて分析を進めている。これまでに骨形成と骨吸収において、その制御をになう破骨細胞分化因子(ODF,RANKL)や破骨細胞形成抑制因子(OCIF,OPG)の関わりが注目されているが、骨系の細胞と挙動が類似する象牙芽細胞においてもこれらの関わりが大きいと考えられるため、これら因子についても考察を行っている。 さらに近年、歯髄細胞の多分化能が注目され、研究されつつあり、骨髄よりも容易に得られる歯髄細胞については分化の観点においても研究を進めている。 これらの基礎的データをもとに、次年度は臨床の場で簡便に用いることの可能な歯髄を保護する方法を開発する予定である。
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