研究概要 |
【目的】 顎顔面領域においても,エストロゲン欠乏による骨の粗霧化が生じる可能性が指摘されている.近年,エストロゲン欠乏が歯の喪失を促すことを示唆する疫学的研究や、骨粗鬆症と密接に関連して起こる下顎皮質骨のX線写真上の変化が報告された.そこで本研究では,エストロゲン欠乏による下顎骨歯槽骨および下顎下縁皮質骨の変化を明らかにするため、閉経後骨粗鬆症モデルである卵巣摘出サルの下顎骨について骨構造変化を検索した。 【方法】 雌カニクイザル(成猿)12頭に,卵巣摘出(OVX),または偽手術(Sham)を施し,経時的に腰椎BMDを測定して76週目に屠殺した.下顎の犬歯および第二臼歯周囲の歯槽骨および下顎下縁皮質骨について、微細骨梁構造および組織学的な変化を検索した。 【結果と考察】 卵巣摘出サルの下顎において 1.犬歯歯槽骨では、腰椎や椀骨と呼応して骨密度が減少していた。歯槽骨の内部では、固有歯槽骨の方向へ骨髄腔が拡大した結果、歯を直接支持する固有歯槽骨が菲薄化しており、エストロゲン欠乏と歯の喪失とが関連するという報告の裏付けとなった。 2.第二臼歯歯槽骨では、骨量は有意に減少しなかったが、微細骨梁構造の変化、すなわち、骨梁の連結性の喪失や、板状から棒状への形態変化が認められた。 3.1.2より、エストロゲン欠乏による歯槽骨の変化は、犬歯部と臼歯部で異なっていた。 4.下縁皮質骨では、オステオンの改変が活発化し、大きな管腔を形成していた。これが、X線写真上に現れる縞状陰影であると考えられた。
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