研究概要 |
昨年度は,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞に対する結合組織成長因子(CTGF)の作用について検討し,以下の知見を得た.すなわち,ヒト腸骨骨髄中には多分化能を持つ間葉系の細胞が存在しており,CTGFはその細胞接着を促進する働きがあることを明らかとした。そこで本年はCTGFの間葉系幹細胞の接着促進作用をさらに詳細に検討するとともに,細胞増殖,分化に対する効果についても検討した.また,in vivoにおける骨再生に対する効果についても併せて検討し以下の知見を得た。 1.CTGFによる細胞接着促進はαvβ3インテグリンからp38のシグナル系路を介している可能性が示唆された. 2.CTGFは幹細胞の細胞増殖をわずかではあるが促進させた. 3.ケモタキセルを用いた細胞遊走実験において,CTGF刺激により幹細胞の細胞遊走能は有意に促進された. 4.ハイドロキシアパタイトをCTGFコーティングすることにより,幹細胞の細胞接着や増殖は有意に促進された.しかし,分化マーカーの一つであるアルカリホスファターゼ活性にはほとんど影響を及ぼさなかった.また,アリザリンレッド染色においても有意な差は認められなかった.すなわち,骨芽細胞への分化を抑制しないことが明らかとなった. 5.血管内皮細胞に対しても幹細胞と同様にCTGFは細胞接着や細胞遊走を促進させた. 6.in vivo移植実験において,ハイドロキシアパタイト-幹細胞-CTGF複合体をヌードマウスの背部皮下に移植すると,アパタイト-幹細胞-PBS複合体に比べて,アパタイト内部への細胞侵入が促進された. これらの結果より,骨欠損に対しハイドロキシアパタイト-幹細胞-CTGF複合体を用いることにより,アパタイト内部への血管新生が早期に誘導され,より確実な新生骨が誘導される可能性が示唆された.
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