研究概要 |
本研究の目的は,インプラント周囲骨の骨増生法を開発することである。前年度までにレポーター遺伝子であるβ-galactosidase(LacZ),骨形成促進因子である結合組織成長因子(Connective Tissue Growth Factor,CTGF,CCN2)遺伝子とその転写制御を行うプロモーター(CAGプロモーター),転写されたmRNAの安定性に必要なポリA部位から構成される外来遺伝子発現ユニットを有するプラスミドDNAをアデノウイルスゲノムDNAとヒト293細胞へco transfectし,相同組み換えによりアデノウイルスベクターを作製した。次にLacZ発現アデノウイルスベクターを用いてマウス骨芽細胞株MC3T3-El cellに対するin vitroにおける遺伝子導入の効率,発現時間の検討を行った.さらにCTGF遺伝子を組み込みin vitro実験を行った。これらの実験結果からin vitroにおいては導入7日後においても目的遺伝子の発現とタンパクの産生が確認できたため,今年度はそれらをin vivoモデルに応用する実験系に取り組んだ。はじめにラットを用いた上顎骨抜歯窩モデルの作成とインプラント埋入モデルの確立を試みた。8週齢のWistar系雄性ラットの上顎第一臼歯と第二臼歯を抜去し,抜歯窩が完全に治癒するまでに3週間必要なことが確認できた。そこでインプラント埋入モデルはこの抜歯窩が治癒した歯槽骨に行うこととした。すなわち,直径1mm長さ2mmのチタンピンを抜歯後治癒した歯槽骨に埋入した。経時的に組織学的観察を行い,この動物モデルでオッセオインテグレーション獲得が組織学的に評価できる可能性を確認した。しかしながら引き抜き強さやプッシュアウトテストなどの物理学的な評価が困難であった。次に,ゼラチンハイドロゲルとCTGFやBMP-2タンパクを組み合わせラット抜歯窩モデルに応用した。しかし,抜歯窩の治癒過程においては抜歯後何も投与しないコントロール群と実験群に差が無かった。抜歯窩やインプラント周囲骨の増生を評価するためにはラットなどの小動物モデルでは明らかな差を求めるには限界があり,イヌやサルなどの大動物での実験モデルの確立が必要と考えられた。
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