研究概要 |
本研究では,ブラキシズムの顎口腔系への影響の現れ方の違いを歯根膜の機能との関連から解明することを目的として,ブラキシズムが歯根膜の判別閾および咬合力による歯の変位に及ぼす影響について検討を行った. 14名の被験者から得られた結果として,ブラキシズム群の歯根膜の判別閾は,右側が(朝17.1±3.8μm,夕16.9±3.5μm),左側が(朝17.1±5.3μm,夕17.4±4.9μm),正常者群では,右側が(朝28.1±4.6μm,夕29.0±7.5μm),生側が(朝31.2±4.3μm,夕31.2±8.6μm)であった.多変量分散分析の結果,両群とも朝,夕の測定時期による判別閾の差はなかった.また,左右差もなかった. ブラキシズム群の判別閾は17.1±3.8μm,正常者群の判別閾は29.9±5.6μmであり,正常者群が有意に大きな値となった(p<0.0003). 以上のことから,ブラキシズム群は正常者群に比べ歯根膜感覚が鋭敏であり,そのため歯根膜咬筋反射が誘発されやすく,持続的な強い筋活動となって現れる可能性が考えられる.また,臨床的には,咬合調整の時間帯による影響はないが,ブラキシズムを有する患者への咬合調整にはいっそうの注意を払う必要性が示唆された. また,6名の被験者についてブラキシズムの歯の変位に及ぼす影響を検討した結果,咬みしめ時の変位方向は,全ての被験者が口蓋側歯根方向へ回転成分の強い変位を示し,ブラキシズムの有無による明らかな差はなかった.一方,咬みしめ時の変位量は,コントロール群が,70.6〜164.8μm,ブラキシズム群が,135.1〜193.1μmで,ブラキシズム群の変位量が大きくなる傾向がみられた. 以上のことから,ブラキシズムの歯の変位への影響は,変位方向よりも変位量に現れる可能性があると考えられた.
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