研究概要 |
本研究では,アミノ酸を骨格とし,メチレン鎖長の異なる4種のアミド系メタクリレートモノマー(NMωA)を合成し,これらを水溶液中に溶解して調整したNMωA水溶液中に健全歯根または歯冠象牙質粉末を添加してNMRスペクトルを測定し,NMωAと象牙質との相互作用について検討するとともに,NMωA水溶液中を健全歯根または歯冠象牙質に作用させた場合のレジンの接着強さを測定し,象牙質へのNMωA水溶液の作用時間が接着強さに及ぼす影響およびNMωAのメチレン鎖長が接着強さに及ぼす影響について検討した。 健全歯根および歯冠象牙質の脱灰量はNMωA分子内メチレン鎖長が長くなるにつれて低下した。これは,NMωA分子内カルボキシル基の解離平衡pH(pKa)がNMωA分子内メチレン鎖長の増加とともに上昇するためであり,象牙質の脱灰量はNMωA分子内カルボキシル基のpKaに強く依存した。 また,NMG1y水溶液の作用時間が健全歯根および歯冠象牙質に対する接着強さに及ぼす影響を検討した結果,NMG1y水溶液の作用時間が長くなるにつれて接着強さは増大し,処理時間が30秒の時最大値,約15MPaを示した。これは,NMG1yがスメヤー層に浸透・拡散し,NMG1y分子内カルボキシル基が健全象牙質を脱灰するばかりでなく,NMG1yが露出した象牙質コラーゲンをプライミングするためと考える。しかし,作用時間が40秒と長くなると,脱灰深さが深くなり,脱灰層内部へのボンディング材の浸透・拡散が十分に行われなかったため,接着強さが低下したものと考えられる。 また,NMωA分子内メチレン鎖長が健全歯根および歯冠象牙質に対する接着強さに及ぼす影響を調べた結果,レジンの接着強さは約12〜15MPaとほぼ一定値を示し,象牙質の脱灰量には依存しなかった。
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