研究概要 |
本研究では,アミノ酸を骨格としたメチレン鎖長の異なる4種のアミド系メタクリレートモノマー(NMωA)を水溶液中に溶解して調整したNMωA水溶液中にウシ歯根および歯冠象牙質粉末を添加して^<13>C NMRスペクトルを測定し,象牙質アパタイトの脱灰の様相を検討するとともに,NMωA水溶液で処理した歯根および歯冠象牙質に対するレジンの接着耐久性に及ぼす影響を調べ,EDプライマーIIと比較検討した。 象牙質アパタイトの脱灰量はNMωA分子内メチレン鎖長が長くなるにつれて,歯冠象牙質で34.6%〜12.9%,歯冠象牙質では34.2%〜12.2%と低下したが,サーマルサイクル負荷(接着耐久性)による低下は2MPa以下で,歯根および歯冠象牙質ともに10MPa以上の接着強さが得られた。 しかし,EDプライマーIIでは,接着耐久性は大きく低下した。この原因を検討するため,プライマー中に含まれる機能性モノマーの加水分解安定性を調べ,さらにモノマーの加水分解に伴うプライマーの劣化が接着耐久性に及ぼす影響を検討した。その結果,プライマー中に含まれるHEMAのエステル基が経時的(製造されてからの時間の経過)に加水分解し,メタクリル酸とエチレングリコールが生成されること,プライマー中のHEMAの割合が40%までに低下しても(60日間保管)初期の接着強さは維持されるが,プライマー中のHEMAの濃度の低下に伴い接着耐久性は低下することが明らかとなり,この低下は,EDプライマーIIの鮮度に強く依存することがわかった。 また,無髄および有髄歯根象牙質の固体^<13>C NMRスペクトルを測定し,コラーゲンの構造について検討した結果,無髄象牙質に帰属されるカルボニル領域の^<13>C NMRピークは有髄象牙質に比べて低磁場側にシフトし,トリプルヘリックス構造の変化が認められた。今後,これらに関する研究をさらに発展させて行く予定である。
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