研究概要 |
実験的咬合干渉として下顎第一大臼歯に装着する約60μmの咬合干渉(早期接触)を12%金銀パラジウム合金を用いて製作した.この咬合干渉を仮着用セメントで装着した状態と未装着な状態で,心拍数変動の周波数分析から交感神経と副交感神経活動の評価を行い,ストレスの判断指標とした. 内科的疾患を有さない被験者7名(平均年齢25.9歳±1.4,SD)に咬合干渉装着,非装着の2条件をランダムに設定した.各条件にタスクとして2分間のタッピングと2分間の中等度のかみしめを約5分間の安静期間をおいて行った.実験中は心電図波形をパーソナルコンピュータに記録,生体波形分析プログラムを用いてR-R間隔を計測し,R-R間隔の周波数パワースペクトルの0.04Hzから0.15Hzの積分値(LF)と0.15Hzから0.4Hzの積分値(HF)を用いて,LF/HFを交感神経活動の指標に,HFを副交感神経の指標とした.周波数パワースペクトルの分析には波形分析ソフトMemcal/win(GMS社製)を使用した.また本研究は大阪歯科大学医の倫理委員会の承認を受けて行った(承認番号040630). 咬合干渉を付与することにより,安静中でも7名中5名はLF/HFは上昇し,交感神経活動の亢進が認められた.またこの5名中3名はタッピングやかみしめなどのタスク実行中には安静時より逆にLF/HFは低下,HFは上昇した.すなわち咬合干渉装着によるストレスをタスクを実行することにより緩和させている傾向が認められた.残り2名はタスク実行中は安静時よりLF/HFは上昇し,HFは低下し,タッピングやかみしめを行うことによりこの2名は咬合干渉付与により亢進した交感神経活動がさらに亢進し,このストレスは緩和されずに機能時にはさらに増強される可能性が認められた.
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