研究概要 |
被験者の下顎第一大臼歯に早期接触となる実験的咬合干渉(以下咬合干渉)を12%金銀パラジウム合金で製作し,30μm以下の早期接触となるように調節した.この咬合干渉を仮着した状態を咬合干渉付与,未装着な状態をcontrolとし,それぞれの状態での自律神経活動をランダムな順で測定した.測定方法は3極誘導で導出した心電図波形をホルター型データレコーダーに記録し波形分析プログラムを用いてR-R間隔の周波数パワースペクトルを算出した.このパワースペクトルの周波数を2帯域に分け0.04〜0.15Hzの積分値(LF)と0.15〜0.4Hzの積分値(HF)を算出し,HFを副交感神経活動の,LFをHFで除したLF/HFを交感神経活動の指標とした.測定は咬合干渉付与とcontrolで約24時間非拘束状態での連続記録を行い,また行動記録カードに生活イベントとその時刻の記入を指示し,24時間総データの平均値および就寝時のHF,LF/HFについて二元分散分析による解析を行った.被験者は研究内容を説明の上同意を得られた内科的疾患を有さないボランティア7名で,また本研究は大阪歯科大学医の倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号040630). 結果 24時間の総データ平均値ではHFはcontrol 734.5から咬合干渉580.8と低下するものの有意な差ではなく,またLF/HFはcontrol 2.8咬合干渉付与2.8と有意な差は認められなかった.しかし就寝時にはHFはcontrol 1313.2から咬合干渉付与749.5に低下,LF/HFはcontrol 1.6から咬合干渉付与2.8に上昇した.すなわち就寝時には咬合干渉の存在により交感神経活動は亢進し,副交感神経活動は抑制され,被験者に外来の刺激がおよびにくい無意識下ではストレスが亢進することが明らかとなった.
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