本研究の目的は、VEGFファミリーのリンパ管新生因子と血管新生因子が口腔扁平上皮癌のリンパ節転移にどのように関わっているかを評価し、また、その最適な検査法を検索することである。 免疫組織化学的研究として、先ず、歯肉癌症例を対象に生検時または、術前治療の行われていない手術標本を用いて、VEGF-CとそのレセプターであるFlt-4、血管数の同定にCD34、CD31、リンパ管の検出にD2-40を、さらにMIB-1、p53も併せて現在検索中である。 血清を用いた研究では、今のところ、VEGFとVEGF-Cに関して施行した。最近5年間に、北海道大学病院歯科診療センターで根治的治療を行った133例の新鮮口腔扁平上皮癌症例と、コントロールとして健常なボランティア47例を対象にELISA用Kitを用い、血清中のVEGFとVEGF-Cの濃度を測定し、臨床病理学的パラメーター、リンパ節転移を含めた治療結果と比較検討した。また、生存率に関してはコントロール群上限で分類した2群間で比較した。結果はVEGFならびにVEGF-Cともに健常人と比較して有意に高い結果であり、健常人の濃度の平均+2SDをカットオフ値とした時、陽性率はVEGF:32%、VEGF-C:21%であった。VEGFは性、腫瘍径、Stage分類と、VEGF-Cは遠隔転移率と、5年累積生存率の項目においてそれぞれ有意に相関を示した。しかし、本研究の主題であるリンパ節転移との関連は認めなかった。今後、新たに、VEGF-D、VEGFR-2、VEGFR-3の測定を行い、VEGFファミリーとは別の血管新生因子であるMMMP-9に関しても行う予定である。そしてこれらの因子の相互関係や、臨床における有用性を比較検討予定である。また、免疫組織学的結果との比較を併せて行う予定である。
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