研究概要 |
これまで、顎関節症患者のMRI撮像に造影剤(ガドリニウム製剤)を使用した場合、上関節腔および円板後部組織の造影効果が顎関節痛と関連することが判った。造影効果の判定は、脂肪抑制造影T1強調画像を用い、顎関節痛の判定は、当科の診断基準(Ohnuki T, Fukuda M, et al.:Magnetic resonance evaluation of the disk before and after arthroscopic surgery for temporomandibular joint disorders. Oral Surgery Oral Medicine Oral Pathology Oral Radiology and Endodontics 96(2):141-148,2003. Ohnuki T, Fukuda M, Musashi T, Nagai H, Takahashi T, Sasano T, Miyamoto Y : Evaluation of the position, mobility, and morphology of the disc by MRI before and after four difference treatments for temporomandibular joint disorders. Dentomaxillofacial Radiology 35,in press.)を用いた。また、関節痛を有する顎関節症患者の上関節腔から採取した滑液の分析では、炎症性メディエーターの濃度が健常人に比べ高いことから、MRIにおける造影効果は、関節構成体の炎症性反応を示している可能性が考えられた。 そこで、造影MRIを施行した顎関節症患者のうち、顎関節内障および変形性顎関節症を対象に、顎関節構成体の造影効果と滑膜炎などの関節腔内の病変と密接に関係する関節円板の転移の程度との関連について検討した。その結果、下顎頭および円板後部組織に造影効果がみられた症例の多くに、復位を伴わない関節円板前方転位がみられることが判った。従って、ガドリニウム製剤によるMRIの造影効果は、顎関節症の臨床症状および臨床病期を反映することが示唆された。
|