研究概要 |
顎関節に疼痛を有する顎関節症患者10例,12関節を対象に,治療前後に造影剤を用いたMRI撮像を行った。造影効果の判定は,脂肪抑制造影T1強調画像を用い,治療効果判定は,当科の診断基準を用いた。治療は12関節すべてに奏効した。治療前に12関節中9関節にみられた造影効果は,治療後は3関節に減少し,造影効果が関節痛と関連することが判った。また,関節痛を有する顎関節症患者の上関節腔から採取した滑液の分析では,炎症性メディエーターの濃度が健常人に比べ高いことから,MRIにおける造影効果は,関節構成体の炎症性反応を示している可能性が考えられた。そこで,造影MRIを施行した顎関節症患者のうち,顎関節内障および変形性顎関節症を対象に,顎関節構成体の造影効果と滑膜炎などの関節腔内の病変と密接に関係する関節円板の転位の程度との関連について検討した。その結果,下顎頭および円板後部組織に造影効果がみられた症例の多くに,復位を伴わない関節円板前方転位がみられることが判った。従って,MRIの造影効果は,顎関節症の臨床症状および臨床病期を反映することが示唆された。 また,Wistar系ラットを用いて,過開口によるメカニカルストレスによる実験的顎関節症モデルを作製した。潅流固定後,採取した滑膜組織を通法に従ってパラフィン包埋し,切片を作製して毛細血管の増生等の滑膜炎の程度を病理組織学的に診断した。しかし,再現性のある顎関節症モデルの作製は困難であり,病理組織学的に各種炎症性メディエーターの発現を評価するには至らなかった。
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