本研究はA170遺伝子の頭蓋顎顔面領域の骨疾患における役割を調べるために、Paget骨病の3型の原因遺伝子であるA170遺伝子ノックアウトマウスをもちいて個体レベルで骨病変の成因を調べるのが目的である。 本年度は以下のような研究を進めた。 1)バッククロス:C57BL/6Jマウスとの交配を続け、さらにバックグランドを統一した。 2)骨形態計測:蛍光色素のカルセインを4日間隔で投与により骨を標識したのち、マウス腓骨を採取、80%アルコール固定し、単位骨量、骨梁幅、骨梁数、骨梁間隙、類骨面、類骨厚、吸収面、破骨細胞数、破骨細胞面などの骨の成長速度や類骨面、破骨細胞面など静的パラメーターと石灰加速度、骨成長速度などの動的パラメーターを測定したところ有意な差はでなかったが、骨形成率が低下する傾向が見られた。これらは、バックグラウンドや年齢にばらつきがあるための可能性があり、再検討の予定である。 3)成長曲線の製作:体重の変化と食事量を測定し、食事量と体重増加曲線をつくったところ、20週頃から有意にノックアウトマウスの体重は増加した。また、食事量は有意に多く、過食による肥満が考えられた。 4)脂肪量の測定:骨の変化とともに、間葉系の分化の程度を見るため、脂肪細胞の評価を加えた。5週から40週までのマウスの脂肪を、白色脂肪(WAT)と褐色脂肪(BAT)にわけて、鼠径部、腎臓周囲、精巣・卵巣周囲、肩甲骨部について、重量を測定したところ、WATは有意に増えていた。 5)未分化骨髄細胞の分析:未分化骨髄細胞に対し、トログリタゾンを添加してオイルレッド0の染色の程度を見て分化の程度を推測したが、脂肪への分化に差があるとは言えなかった。6)また、A170遺伝子はNrf2制御下にあるため、おなじ制御のPrxI遺伝子ノックアウトマウスについても同様の解析をおこない次年度の実験計画の基礎とした。
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