異常高血圧予測の重要な背景因子である加齢による循環制御能力低下を明らかにするため、システム同定を用いた数学モデル推定を行った。70歳以上の異常高血圧の既往のある高齢者10名、正常血圧の高齢者10名および健康若年者10名を対象とした。仰臥位で非侵襲的に測定した心電図信号および動脈圧波形信号をそれぞれ入力信号、出力信号とし、ブラックボックスモデリングを行った。方法は心電図から一拍毎に算出したRR間隔変動をブラックボックスへの入力信号とし、ブラックボックスからの出力信号としてトノメトリ法による非観血的動脈圧波形と設定した。この2つの信号はcirculatory mechanicsを介して生理学的に結合していると考えられる。そこで、この2つの信号間の関係について工学的手法であるインパルス応答、ステップ応答およびプロセスモデルを用いて解析を行った。 一般にシステム同定は安定した状態方程式を得るのが困難で、モデル推定方法、解析パラメータ設定、次数決定などに熟練を要する。これらが不十分であったために十分に安定した状態方程式を得ることができなかった。ある被験者では十分に残渣が少ない状態方程式が得られたが、同様の手法では別の被験者では非常に適合度が悪いという結果となった。パラメータ設定およびシステム同定方法の選択を見直し、より安定した精度の高い状態方程式を算出できるよう試行したが、現時点で可能な解析手段では十分な改善が認められなかった。そこで、新たな解析アルゴリズムを構築し、それによる再解析および追加実験を実施しているところである。
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