システム同定による高血圧予測方法の予測に先立ち、臨床疫学的にhypertensive crisesがどの程度の頻度で発生しているかを明らかにし、その発生と関連する背景因子について検討を行った。その結果、hypertensive crisesの発生頻度は3679人の70歳以上の高齢者ののべ5664回の観血的歯科処置の6.0%に発生していた。また、多重ロジスティック解所により、hypertensive crisesと有意な関連を示した患者の背景因子には、高血圧症の既往、および初診時血圧がGrade2以上が認められた。 ついで、加齢による心血管系制御の変化を明らかにするためにシステム同定による解析を行った。循環制御系としての4つの生理学的なカップリング、すなわち、2つの自律神経を介した結合((1)心拍圧受容体、(2)ILVとして測定した呼吸と心拍数)、2つの機械的な結合((1)心室収縮と動脈圧波形形成、(2)呼吸と動脈圧)が考えられるが、本研究では特に重要と考えられる心拍と動脈圧の関連について検討した。非侵襲的に測定した心拍変動、動脈圧をシステム同定により定性的に解析した。70歳以上の高齢者10人(うち正確な計測が可能であった4人を使用)とコントロールとしての健康成人男性10人(うち正確な計測が可能であった4人を使用)を被験者とした。心血管系のシステム同定は、これまでの方法に比較してより高感度に加齢による循環系制御能の低下を検出できる強力な道具となり得る可能性がある。
|