研究概要 |
本年度研究ではサイトカインの固定化効果について検討する為,サイトカインとしてrhBMP-2,担体としてI型アテロコラーゲンを用い固定化条件の検討および固定化の確認を行った。また,培養細胞に及ぼす影響について増殖活性ならびにアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の測定,Smad系を中心としてシグナル伝達系遺伝子発現変化について観察を行った。 rhBMP-2固定化条件の検討では,担体として無処理のI型アテロコラーゲンを用いたところ,rhBMP-2とI型アテロコラーゲンの分子間結合は観察されなかった。ウエスタンブロット法による解析ではrhBMP-2,I型アテロコラーゲンともに同一分子間で結合を起こした可能性が考えられた。そこでI型アテロコラーゲンアミノ基をカルボキシル化させたサクシニル化I型コラーゲンを用いて,rhBMP-2との結合体を作製したところ、SDS-PAGEにてこの結合体の分子量に一致したバンドが確認された。さらに抗BMP-2抗体を用いたウエスタンブロット法でも結合体の分子量に等しい位置にバンドが検出されたことからサクシニル化I型コラーゲンにrhBMP-2が結合したことが確認された。 固定化サイトカインの培養細胞に対する影響の検討では,固定化rhBMP-2は培養細胞の増殖活性に影響を与えないにも関わらず,ALP活性を濃度依存性に上昇させることがわかった。 半定量的RT-PCRによる遺伝子発現の検索では,固定化rhBMP-2添加培養細胞ではBMP-4,BMPR-IA,特異型Smad1,5,抑制型Smad6,7各遺伝子の発現が持続して継続する傾向が認められた。以上からrhBMP-2の固定化により細胞内シグナルが持続し,細胞活性が上昇する可能性が考えられた。現在はBMP-2以外のサイトカイン固定化効果検討の為FGF遺伝子等のクローニング,発現ベクターへの組み込み等を行っており,培養細胞実験に加えて動物実験による固定化効果の観察を予定している。
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