研究概要 |
口腔癌の分化度と抗菌ペプチド、ヒトβデフェンシン(HBD-2)の局在においては、高分化のものほど、HBD-2の局在が高いことを以前報告した。そして今回われわれは、移植とデフェンシンとの関係を中心に研究することとした。移植の成否を決めるのは、まず感染に伴う炎症の有無である。そこで感染に伴う炎症とデフェンシンの関係を嚢胞上皮(炎症性嚢胞に分類されない歯原性角化嚢胞と炎症性嚢胞である歯根嚢胞)を用い検討した。歯原性角化嚢胞(14例)及び歯根嚢胞(19例)における抗菌ペプチドであるヒトβデフェンシン(HBD-2)およびヒトαデフェンシン(HNPs)の局在をそれぞれ抗体を用い、免疫染色にて検索した。その結果、歯原性角化嚢胞におけるHBD-2の局在は、錯角化層および顆粒層において認められ、前者の方が濃染された。また、HNPsは、上皮内においては、認められず好中球の存在部位に認められた。一方、歯根嚢胞におけるHBD-2の局在は、顆粒層と有棘層の上層部において認められ、HNPsは、好中球の存在部位ばかりでなく、好中球周囲組織においても局在が認められた(Asian J Oral Maxillofac Surg 16:242-247:2004)。次に、異種移植の場合、問題となるのが、自己免疫である。そこで、われわれは、ヒト口唇腺組織を用い、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群、口腔乾燥症、コントロール(非シェーグレン症候群非口腔乾燥症)の3群につき、ヒトβデフェンシン(HBD-1,2,3)の局在をそれぞれ抗体を用い、免疫染色にて検索した。その結果、シェーグレン症候群患者の口唇腺組織中には、HBD-1,2,3の局在は、認められなかったが、口腔乾燥症およびコントロール群においては、口唇腺組織中の導管において局在が認められ、自己免疫疾患におけるデフェンシンの関与が示唆された。(口腔科学会地方会、香川、2005)。今回の研究により、細菌感染とデフェンシンおよび自己免疫疾患であるシェーグレン症候群とデフェンシンの関係が明らかになり、移植時における貴重な資料となった。
|