研究概要 |
ナチュラルキラー(NK)細胞は,自然免疫において発癌抑止に重要な役割を果たすことが知られている。近年,NK細胞を活性化するレセプターとしてNKG2D分子が報告された。このNKG2Dは,ホモダイマーの形をとり,シグナル伝達物質であるImmunoreceptor Tyrosine based activation motif (ITAM)をもつDAP10分子と会合して,そのリガンドであるMICA (MHC class I chain-related molecule A)を認識すると傷害活性を誘導することが明らかにされている。MICA遺伝子には、膜貫通領域をコードするエキソン5内のGCT繰り返し配列数の違いにより、4回繰り返しがA4型、5回がA5型、6回がA6型、9回がA9型、さらに2回目と3回目の間にG塩基が変則的に入るA5.1型の5型が存在することが知られており、I型糖尿病やベーチェット病などの疾患感受性との関連性が示唆されている。 口腔扁平上皮癌(Oral Squamous Cell Carcinoma, OSCC)における、MICA分子の機能を明らかにするために、OSCCの疾患感受性とMICA遺伝子多型の関連性を検討した。 DNA塩基配列解析の結果、OSCC患者(n=100)ではA5.1型を有する割合が30%と、対照(n=103)の15%に比べて有意に(p=0.01)高いことが明らかとなった。他の遺伝子多型には有意差はみられなかった。既に報告されている日本人のMICA遺伝子多型解析の結果によると、日本人のA5.1型は17%であり、これと比較してもA5.1型を有するOSCC患者の割合は有意に高い結果となった。A5.1型OSCC患者では、他の多型を有するOSCC患者と比べて初診時のNK活性は低い傾向を示し、特にA5型およびA9型と比較すると有意に低下していた。
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