研究概要 |
PCR産物(BMP-2 DNA断片)からBMP-2分泌シグナル領域を含むアミノ酸配列をコードするcDNA断片を調整した.遺伝子活性マトリックスとして,ウシ真皮由来凍結乾燥アテロコラーゲン(10mg)とポリ乳酸-グリコール酸共重合体の2種類を使用した.BMP-2 plasmid DNA溶液含有マトリックス(BMP-2遣伝子含有アテロコラーゲン群,BMP-2遺伝子含有ポリ乳酸-グリコール酸群)を調整した.なお,陽性コントロール1としてBMP-2(10μg)溶液(1μg/μl;10μl)を0.3%アテロコラーゲン溶液(3.33ml)と混和後,凍結乾燥・複合化して使用した.陽性コントロール2としてBMP-2(10μg)/ポリ乳酸-グリコール酸共重合体を使用した.陰性コントロール1としてアテロコラーゲン単独群,陰性コントロール2としてポリ乳酸-グリコール酸単独群を設定した. 生物検定法は,4週齢ウィスター系雄性ラット背部皮下組織内に全身麻酔下で試料を埋入した.3週後に摘出し,ギ酸脱灰後ヘマトキシリン-エオジン染色標本を作製した. 光学顕微鏡観察結果より,BMP-2遺伝子含有アテロコラーゲン群において,血管の新生がコラーゲンマトリックス内に認められたものの骨・軟骨誘導を確認することができなかった.また,BMP-2遺伝子含有アテロコラーゲン群の血管数はアテロコラーゲン単独群よりも多いものの優位ではなかった. 陽性コントロール1,2群に骨誘導が確認された.BMP-2/アテロコラーゲン群がBMP-2/ポリ乳酸-グリコール酸よりも旺盛に骨が誘導され,炎症反応が少なかった.陰性コントロール1,2群には骨誘導はみられなかった. BMP-2遺伝子の添加量を増加しても,本生物検定系では,BMP-2遺伝子の硬組織誘導に関する効果は明らかでなかった.BMP-2タンパク単独療法で確実な骨誘導が得られ,遺伝子・タンパク融合療法の優位性は認められなかった.
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