研究概要 |
近年、ストレスを示す指標として、自律神経活動の評価法の一つである心電図RR間隔変動の解析が応用されている。今回われわれは、障害者に対する歯科治療とストレスの関係をみるために、心拍変動と血圧変動から自律神経活動の解析を試みた。 データーは、全身麻酔下歯科治療のときに患者17名(男性12名、女性5名、平均年齢21,5±8,1歳)から採取し、心拍変動の低周波成分の積分値(以下,LF-RR),心拍変動の高周波成分の積分値(以下,HF-RR),心拍変動のLF成分とHF成分の積分値の比(以下、LF/HF-RR),収縮期血圧変動のLF成分の積分値(以下,LF-SBP),収縮期血圧(以下,SBP),拡張期血圧(以下,DBP),心拍数(以下,HR)の項目を解析した。Wilcoxon順位和検定を行い、危険率5%未満を有意差ありとした。 (1)局所麻酔注入時、印象採得時、咬合採得時では、SBP,DBP,HRに変動は認められなかった。 (2)HF-RRは、局所麻酔注入時に有意差が認められた。 (3)LF-RR,LF/HF-RRおよびLF-SBPは、局所麻酔注入時、印象採得時、咬合採得時に有意差が認められた。 これらのことから、SBP,DBP,HRに変化がみられなくても、患者は局所麻酔注入および印象採得、咬合採得をストレスとして受けとっていると考えられた。SBP,DBP,HRの測定だけでは、患者がこうむるストレスを反映するのに不十分と思われた。一方、患者がこうむるストレスを反映するのにLF-RRおよびHF-RR,LF/HF-RR,LF-SBPの測定は適している。
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