将来的に骨欠損部への修復には間葉系幹細胞を利用しての再生治療が有用な方法である。現在、間葉系幹細胞を移植することにより、間葉系幹細胞が骨・軟骨細胞に分化することは示唆され、臨床にも応用され始めている。しかし、骨細胞あるいは軟骨細胞への誘導を左右するkeyとなる転写因子やタンパク質などについては、不明な点が多い。そこで、我々は間葉系幹細胞を培養することにより、それぞれの分化に関与する転写因子、分化の指標となるタンパク質あるいはその他関連因子についてGene Chipを用い、経時的変化を調べることを目的としている。今回は、間葉系幹細胞の骨への分化について検討した。間葉系幹細胞をコントロールとしてGrowth Mediumを、骨誘導用としてOsteogenic Induction Mediumを使用し培養した。経時的に間葉系幹細胞を観察するとともに、Alizarin Red S S染色法、von Kossa染色法を行った。その結果、Alizarin Red S S染色において培養10日目より陽性を示し、経時的に反応が強くなり、培養17日目には強陽性を示した。また、von Kossa染色では、培養21日目に強陽性を示した。コントロールでは、どちらの染色においても陰性を示した。以上の結果から培養間葉系幹細胞が骨への誘導の経過の一部が確認できた。これらのことを基に、本年度は骨関連タンパク質についての遺伝子発現、タンパク質発現についても確認し、軟骨への誘導について指標にるタンパク質の遺伝子発現およびタンパク質発現を確認し、転写因子についての検討を行う予定である。
|