研究概要 |
頸部に起因する口腔顔面痛(関連痛)を解明するために,ラットを用いて関連痛モデルを作製し,Fos様蛋白(FLP)の出現を指標に関連痛の病態を検討した.まず,雄のSDラットのオトガイ部にカプサイシン10μmolを注入し,その1時間後に灌流してFLPの発現を免疫組織学的に観察した,その結果,同側の三叉神経脊髄路核の尾側寄り(Vc/C)と頭側寄り(Vi/Vo)に強いFLPの発現を見た.次に頸部(耳介後部)にカプサイシン10μmolを注入したラットでFLPの発現を観察すると,同側の上部頚髄に免疫活性の亢進を観察できた.さらに,このカプサイシンを頸部(耳介後部)に注入したラットにおいて同側のオトガイ部を非侵害的強度のボンフレイフィラメント(vF)で刺激すると,同側の上部頚髄から下部延髄において強いFLPの発現が見られたのに加え,三叉神経脊髄路核の頭側寄り(Vi/Vo)にも弱いFLPの発現が観察された.一方,頸部へのカプサイシンの注入を行わなかった群では,オトガイ部を同じ強度のvFで刺激してもVc/CとVi/Vo領域にはFLPの発現が見られなかった. これらの結果から,頸部の侵害刺激(カプサイシン注入による急性痛)が三叉神経領域の疼痛閾値を低下させたことが伺える.しかし,臨床的には頸部の慢性痛にあわせて関連痛としての口腔顔面痛が見られることが多いことから,むしろ慢性モデルにおける疼痛閾値への影響を観察する必要があると思われる.当初の実験計画にあった頸神経の結紮モデルでは未だ有意な結果を得ていないため,今後は実体顕微鏡(オリンパス:本年度購入)を用いて頸神経(C2-4)の切断モデルを追加作製し,同様にオトガイ部へのvF刺激を加え,FLPを指標に三叉神経における疼痛閾値への影響を見ていく予定である.
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