研究概要 |
本研究では高齢者における骨折治癒の遅延とCOX-2の関係を明らかにし、高齢者に対する非侵襲的な超音波を利用した骨折治療法を確立することを目的としており、同時に高齢骨折患者へのNSAIDs投与の危険性を検討する。COX-2ノックアウトマウスを継代し、超音波パルス照射は,麻酔下に,骨折3日目より右側骨折部に,臨床及び細胞実験と同じく周波数1.5MHz,パルスの周期1kHz,バースト幅200μsec,出力30mW/cm^2の超音波を1日20分間照射した。これまでに、1)高齢マウスでは骨折治癒が遅延するが、超音波によって治癒が促進され、2)COX-2ノックアウトマウスではさらに骨折治癒が遅延し、超音波によって骨折治癒が促進されないことが明らかになったので、照射群の経時変化について、諸過程を観察した。術後10日(1週間照射)と3週間の結果から、血腫形成、炎症反応、膜性骨化、軟骨形成まではほぼ正常に進行するがそれ以降停滞し、骨折部の石灰化が起こらないことが判ったので、ブロックされるプロセスを特定する目的で、野生型で軟骨形成がピークとなり軟骨内骨化が始まる7-10日付近において、骨折治癒に関与しうる成長因子や転写因子、基質タンパクなどの局在をmRNAレベルで評価した。骨系細胞の分化を規定するCbfa1・OsterixやBMP-2/4等はCOX-2ノックアウトマウスでも発現していた。VEGFaやMMP-9などが超音波パルス照射の有無に拘らず全く発現されなかった。分化した骨芽細胞のマーカーであるALPやオステオカルシン(BGP)も見られなかったが、軟骨細胞や線維芽細胞の増殖を促進して軟骨の最終分化を阻害するFGF-2は逆にノックアウトマウスで高発現していた。今後それぞれの因子がどの細胞によって産生され、全体として軟骨内骨化が進展しないのか検討する。
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