研究概要 |
骨折治癒の遅延とCOX-2の関係を明らかにし、非侵襲的な超音波を利用した骨折治療法の原理を確立することを目的に、COX-2ノックアウト(KO)マウスを麻酔下、骨折4日目より右大腿骨骨折部に、周波数1.5MHz,パルス周期1kHz,バースト幅200μsec,出力30mW/cm^2で1日20分間照射した。これまでに、1)高齢マウスでは骨折治癒が遅延するものの超音波が治癒を促進し、2)高齢COX-2KOマウスでは更に骨折治癒が遅延して超音波が治癒を促進しないこと、更に3)血腫形成、炎症反応、膜性骨化、軟骨形成まではほぼ正常に進行するがそれ以降停滞して骨折部が線維化することが判った。今回、高齢COX-2KOマウスの遅延を特定する目的で、野生型で軟骨内骨化が始まる7-10日付近において、骨折治癒に関与しうる各種因子、基質タンパクの局在をmRNAレベルで比較検討した所、骨系細胞分化を規定するCbfa1・OsterixやBMP-2/4、軟骨細胞マーカーのII型コラーゲン、アグリカン等はCOX-2KOマウスでも発現していた。一方内軟骨性骨化を担うVEGFaやMMP-9等が超音波パルス照射の有無に拘らず、高齢COX-2KOマウスにおいては全く発現されなかった。成熟骨芽細胞マーカーであるALPやオステオカルシンも見られないが、軟骨細胞・線維芽細胞の増殖を促進して軟骨肥大化(最終分化)を阻害するFGF-2は逆にKOマウスで高発現していた。軟骨内骨化の遅滞とFGF-2タンパク質の高発現が、PGE_2受容体のEP2/4のアゴニストを術後4日目から同時投与すると野生型のレベルへとレスキューされた。正常肥大軟骨細胞は産生しないFGF-2が、高齢COX-2KOマウスで高発現していることも判った。COX-2によるFGF-2の調節は高齢者の骨折治癒に重要であり、NSAIDs投与は危険な可能性が高い。
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