【目的】光線力学療法(PDT)は、腫瘍親和性を持つ光感受性物質を投与し、腫瘍にレーザーを照射することにより、腫瘍を壊死させる局所療法である。しかし、舌癌におけるPDTの基礎的研究は殆どされていない。今回我々は、当教室で樹立したラット舌癌細胞株RSC3E2株(E2)、RSC3LM株(LM)に対するポルフィマーナトリウム(フォトフリン)と、新しい光増感剤であるタラポルフィンナトリウム(レザフィリン^<TM>)を用いたPDTの抗腫瘍効果をin vitroで比較検討した。さらに、E2株、LM株、HSC2株、HSC3株をマウス皮下に移植するモデル系を用いレザフィリンPDTの抗腫瘍効果を検討した。【方法】E2株、LM株共に培養し、フォトフリンとレザフィリンを添加し、近赤外線治療器(SUPER LIZER)、半導体レーザー装置Panalas6405(PDレーザー)を用いてPDTを行った。細胞数およびアポトーシス誘導を比較検討した。また、上記4株をマウスに皮下移植を行い、レザフィリンを尾静脈から投与し、PDレーザーによりPDTを行った。GFPチェッカーを用いて体外から治療効果をモニターすると共に、マウスを屠殺し、腫瘍体積、腫瘍重量を計測し抗腫瘍効果を検討した。さらに病理組織についてHE染色、BrdU染色し検討した。【結果と考察】両株いずれに対しても、従来のフォトフリンに比べ、レザフィリンを用いたPDTの方が強いアポトーシスを誘導し、特に悪性度の高いLM株に対してその効果が大きく、レザフィリンPDTがより優れた坑腫瘍活性を有していることが示唆された。また、マウスモデルにおいても両株共にレザフィリン濃度依存的に有意な抗腫瘍効果が認められた。病理組織では、4種類すべての細胞で2日後ではBrdU染色により腫瘍増殖の完全な抑制が認められた。しかし、7日後には再増殖が起こっている。PDTの照射方法等、再考が必要と考えられる。
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