研究概要 |
センチネルリンパ節(Sentinel Lymph Node : SLN)の概念は,さまざまな領域の癌手術で導入されつつあり,口腔癌においてもSLNの概念が成立するか否か,さらにSLN生検はcN0症例に対する頸部郭清術の適応の指標となる可能性を検討した。 口腔扁平上皮癌T1-T2,cN0症例20例を対象に,^<99>Tc-フチン酸による術前リンフォシンチグラフィおよび術中ガンマプローブガイド下に頸部SLNを同定し,SLNを摘出,迅速生検を行った。また一部の症例では色素法(ICG)による同定法を併用した。SLNおよびSLN以外の頸部郭清リンパ節への病理組織学的転移の有無を,H-E染色およびサイトケラチン(AE1/AE3)免疫組織染色により検索した。 その結果,20症例すべてにおいて,RI法により,それぞれ1-2個のSLNが同定可能であった。SLNの迅速生検(H-E染色)において2例にリンパ節転移を認めたため,続いて頸部郭清術を施行し,SLN以外のリンパ節にそれぞれ1個の組織学的転移を認めた。SLN生検で転移を認めなかったが選択的頸部郭清術を施行した4例においては,すべての郭清リンパ節の免疫組織染色でも転移陰性であった。SLN生検で転移を認めず,頸部郭清術を行わなかった14例の全SLNを免疫組織染色により検索した結果,1例に遊離腫瘍細胞(Isolated Tumor Cell)を認めた。この14例は術後も放射線療法や化学療法を加えず,最低1年以上経過観察しているが原発巣再発および頸部リンパ節転移を認めていない。以上の結果より,口腔癌においてSLNの概念が成立し,RI法によるSLN生検はcN0症例に対する頸部郭清術の適応の指標となることが示唆された。
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